あとは、私が中学生の教員をやっていたときの話です。

とある中学校に、18人の悪ガキグループがいたんですね。

ある日、そのうちのひとりが「先生、オレ昨日から何も食ってないんだよ」と言うから、「これで生協行ってなんか好きなもん買ってこいよ」と、財布ごと渡しました。

ところが、1時間以上たっても帰ってこない。「あのヤロー」と思っていたら、片方はカップラーメン、片方はプリンでいっぱいの、ふたつの大きな袋を手に下げて帰ってきたんです。

「なんだよそれ！」

「18人分と、先生のも買ってきた」

「なんだよこのプリンは」

「プリン安かったんで、先生のお財布見たら買えたんで、みんなのデザート買ってきた」って。

怒ろうかと思ったんですけど、「お前、優しいじゃん」ってほめたんですよ。

そしたらその生徒は「はじめてほめられた」って泣いたんです。

親にも友だちにも、今までほめられたことがなかったんですね。

ついでに言うと、財布の中身は一円玉と五円玉しか残ってなくて、ずいぶんちゃんと計算して買ったんだなって思いました（笑）。

このあいだ向井さんのお母さんからお手紙をもらったんです。今度横浜で開かれる展覧会に向井さんの詩も展示されるので、「久夫の代わりに、久夫の写真と一緒に行ってほしい」と言われて。

ブワーッと涙が出ました。

なんていうんでしょうね、向井さんの苦しみや悲しみに向き合ってきた結果、悲しくて泣いたことよりは嬉しくて泣いた、ということが多くて。

でも、嬉しくて泣くんだけど、嬉しさの裏側にはいつも苦しさとか、悲しさがある気がします。
めちゃめちゃ頑張ったこと、その結果に対して泣いちゃうんでしょうね。

がんばってる間って、しんどかったり苦しかったりするので。

本当です。私もよく泣くので（笑）。

たとえば、このあいだ私の誕生日だったんですけど、お母さんから手紙をもらって、その内容に感動して泣きました。

でも、たしかになんで嬉しいのに泣くんですかね。嬉しすぎたり、悲しすぎたりすると、自分の気持ちをうまく表現できなくて、表現しきれないくらいの気持ちになると、人は泣くのかな。

あります。僕は2015年に「旅する先生プロジェクト」を企画し、474日かけて人生二度目の自転車日本一周に挑戦しました。

その道中で、小学校24校、中学校15校、高校18校、大学5校で講演会や出前授業を実施しながら。ゴールした時はめちゃくちゃうれしくて、達成感の涙が出ました。

あとは、その旅の途中、山形県で出会ったおばちゃんが、すごく良くしてくれたんです。

家に泊まらせてくれて、シワひとつないシーツをかけた布団を敷いてくれたり、最後お別れの時にはでっかいおにぎりと絶対食べきれないおかずをくれたり。

お別れの時、「私にも、あのときの息子が今生きてたら惇くんぐらいの年かな」と言われてそれも泣きました。

悲しい涙、悔しい涙、親が言うことを聞いてくれない時の涙、寝たくない涙、もっと遊びたい涙etc…私もいろいろな涙を流しました。

今日も世界中のこどもたちの間でこの涙たちがたくさん流れていると思うんですけど、うれし涙、これも本当にあります。

そして、あなたからの質問で気づかせてもらいました。うれし涙の思い出って自分にとって記念日のはずなのに、忘れているっていう（笑）。ちょっと今、くやしい気持ちです。

なんだろう、リレーで勝った時泣いたかなあ。。。
きっと嬉し涙って、忘れていくものなんだと思います。その時は「涙」よりも「うれしい」が勝っているから、うれしかったことに意味があって、涙はそこに後から連れそっているだけなんじゃないかな。

逆に悔し涙とか、つらかった出来事は、10年くらい前の話でも思い出せます。例えば、『JJ』という女性向けのファッション誌でモデルをしていたんですが、自分だけ表紙の撮影から外されたことがあって、その時はつらくて泣きました。

私の場合はうれしいことの方が人生で多いから、たくさん「うれしい」があると、その中で「つらい」「悲しい」涙の思い出は目立つというか、本に例えるとすごい背が高くて取りやすいというか、すぐにどこの棚にあるかわかるんです。

あ、そうでした！　さっき言ったJJという雑誌で、モデルとして初めて表紙が決まった時はうれしくて泣きました。忘れてた（笑）。

こんなふうにうれし涙は忘れてしまうけど、悔し涙って、悔しいだけじゃなくて、悔しさと一緒に「もっとがんばらなきゃ」という気持ちと、その積み重ねの時間がある分、忘れないのかもしれませんね。

本当だよ。

幸せがなかったら悲しみもないし、それらはコインの表と裏のようなもの。

そのコントラスト、明るい部分と暗い部分の差があるからこそ、
つまり人生にはプラスなこととマイナスなことがあるからこそ、
僕たちは成長できるんじゃないかな。

本当です。

自分の嬉し涙でパッと思い浮かぶのは、2017年に川崎フロンターレがJ1初優勝したとき。

あのときは、信じられないぐらい勝手に涙がこぼれてきました。

僕がプロのサッカー選手として18年間所属していた川崎フロンターレは、15年間ずっと優勝できませんでした。

だから、僕自身も悔しさが相当たまっていたし、チームメイト、サポーターのみなさん、そしてこのチームでいつか優勝したかったけどチームを去らなければいけなかった選手たちの思いなど、いろいろなものを本当に長い間背負いながらやっていて。

それが、一気に涙になって出たんでしょうね。

なぜ優勝できたかというと、それは絶対あきらめなかったからだと思います。

優勝という夢を叶えるために、とにかく根気よく努力したから。

逆に、すぐ叶ってしまっていたら、努力しなくなっていたんじゃないかな。

僕は、サッカー選手を引退してからいろいろなスポーツの選手たちと会う機会があるのですが、みなさん本当にそのスポーツが大好きなんです。

だから、いちばんになりたかったら、苦しい練習も努力だと思っていないし、当然やるでしょ、みたいな感じです（笑）。

夢を叶えるって、そんなに甘くない。

その道のりでは、「どれだけそれが好きか」を常に試され続けるし、もし好きでいられなくなったら、夢は叶わなくなると思います。

本当だよ。悲しいとき涙にも出るけど、嬉しくても出ます。

なぜかというと、心が震えるから。

僕は自分が40歳になったとき、お母さんに感謝しなくちゃと思って電話したんです。

「40歳になったよ、ありがとう」と言おうとして、「ありがとう」の「あ」を言った瞬間涙が止まらなくなりました。

お笑い芸人になるという夢を追って自由に生きてきて、今は結婚して東京に住んでいます。

僕が高校時代、泥だらけになった野球のユニホームを毎日洗ってくれたり、夜遅くてもご飯を作ってくれたり、朝は誰よりも早く起きていろいろ準備してくれたり、そのときは当たり前だと思っていたことの大切さを、今になって気づくようになって。

こんなふうに、大人になればなるほど心が震えることが多くなってくるから、ハンカチを用意して楽しみに待っていてね。

ちなみに「涙」は、さんずいに戻ると書きます。

つまり、自分に戻る、気持ちをリセットするということ。確かに、泣くとどこかスッキリしますよね。

「泣」はさんずいに「立」だから、たとえ悲しくて涙を流したときも、必ず立ち上がれると考えれば、きっとまたいいことが起きるよ！

本当です。

例えば、小学生が運動会でがんばって１番になったとき、うれしくても涙を流す子はあまりいませんよね。

でも、オリンピックで金メダルを取った人が涙を流していることがありますよね。それはきっと、目標に向かって何年も、何年も努力して、達成したから。

だから、その努力が大きければ大きいほど、涙が出るのかもしれません。

私も、大人になってからそれに近い経験があります。

私は今93歳、東京都中野区の地域新聞『週刊とうきょう』で新聞記者をしています。

亡き夫が創刊したこの新聞も、昨年創刊50周年を迎えました。

夫が亡くなってから７、８年が経った頃、創刊15周年の会を開きました。そのとき、仕事関係の方が大勢来てくださって、私には身に余る光栄でした。心から感激したのを覚えています。

特に印象的だったのは、教師をしていた兄のことです。

兄は、私が地域新聞の記者として働くことをあまり良く思っていませんでした。

ところが、その会には足を運んでくれただけでなく、「自分にはこんなに多くの人を集めることはできない。こんなにもたくさんの人が友子のために集まってくれた」といった挨拶をしてくれたんです。

やっと兄が認めてくれた気がして、涙が出るほど嬉しかったですね。

今でもこの話をすると、涙がこぼれそうになります。

本当です。

僕の場合は、例えば子どもが生まれた時に泣きました。

あなたが生まれた時、きっとあなたの両親も泣いたと思うよ。

涙にもいろいろあります。

僕は、子どもの頃アリを踏んだだけで「殺してしまった」と思って悲しくて泣いていました。

あと、公園で離れ離れになっているオンブバッダ（メスの背中にオスが乗っていることで知られる）を見ても泣いてましたね。

「こんな小さいバッタのオスとメスが、こんな広い公園でバラバラになってしまって、もう二度と会えないんじゃ、、、」

そんな子どもでした。