Q&A

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Q

どうしてウソをついちゃいけないの?(7歳・男子)

こたえたおとなたち
  • 作家・広告プランナー

    浅生鴨さん

  • サーファー・シェイパー

    鈴木正さん

  • 元郵便局員・『41歳の東大生』著者

    小川和人さん

プロフィール

浅生鴨

作家・広告プランナー

浅生鴨(アソウカモ)さん

作家、広告プランナー。1971年、神戸市生まれ。たいていのことは苦手。ゲーム、レコード、デザイン、広告、演劇、イベント、放送などさまざまな業界・職種を経た後、現在は執筆活動を中心に、広告やテレビ番組の企画・制作・演出などを手掛けている。主な著書に、『中の人などいない』『アグニオン』(新潮社)、『猫たちの色メガネ』(KADOKAWA)、『伴走者』(講談社)、『どこでもない場所』『すべては一度きり』『たった二分の楽園』(左右社)、『だから僕は、ググらない』(大和出版)、『ぼくらは嘘でつながっている。』(ダイヤモンド社)。自身が責任編集をつとめる『異人と同人』シリーズを展開中。座右の銘は「棚からぼた餅」。最新作は『三万年後に朝食を』(左右社)。

A

いいウソはどんどんつけばいい

ウソは、大きく分けると、ついていいウソとついてはいけないウソがあって、ついてはいけないウソというのは、誰かを悲しい気持ちにさせたり、傷つけてしまったりするものです。でも、みんなが楽しくなるウソは、どんどん言い合っていいと思うんですね。
たとえば、いつも見ているテレビのアニメや、読んでいる絵本などは、本当のことではないですよね。あれも、ウソと言えばウソ。だけど、みんな見て読んで、わくわくしたり、楽しんだりしていますよね。
誰も悲しい傷つかないし、みんなで大笑いできるウソだったら、もう競争してみんなで言い合えばいい。そうすれば、毎日がどんどん面白くなると思うんです。
ウソについて、「冗談とどう違うの?」という質問もありましたが、これは同じだと思うんですね。ウソをいけないこと、冗談をいいことと言うことが多いように思います。
冗談は、誰かを楽しませようとしてつくウソ。ただ、冗談もウソと同じように良い冗談と悪い冗談があって、悪い冗談は人を傷つけます。だからやっぱり、ウソにしても冗談にしても、自分がそれを言うときには、言われたらどう思うかなっていうのを、言う前にちょっと考えてみる。
例えば、自分のお母さんとかお父さんの話を友だちにするときに、お父さんやお母さんがいない子は、その冗談を聞いて悲しい気持ちになるかもしれない。
だから、いろいろな人がいて、いろいろな感じ方や考え方があるということが少しずつわかると、どういうウソがみんなを楽しませて、人を傷つけてしまうのかわかってくると思います。そうすると、いいウソとか、いい冗談がどんどんつけるようになりますよ。

「ウソだ!」って言う前に、「どうしてウソをついたのかな」

大人が言う「ウソをついちゃいけない」は、最初に言ったように、人を傷つける悪いウソはついちゃいけないよ、ということ。でも、ウソについてちゃんと考えたことがある大人は、実は少ないかもしれません。
ちゃんと考えると自分がこれまでに誰かを傷つけてきたことを思い出してしまうし、それはつらいことだから、なるべく忘れたい。だからとりあえず「ウソをついちゃいけないよ」と言っていると思うんですよね。

だから、「今まで一番誰かを悲しませたウソはなに?」って、お父さんとお母さんに聞いてみるといい。どんなウソで、どんなふうに人を傷つけてしまったかということを、すごく嫌な顔しながら、でも一生懸命教えてくれると思います。

自分も小学生3年生のとき、モデルガンを持ってないくせに持ってるって言いつづける友だちがいて、「じゃみんなで見に行こうぜ」ってその友だちの家にまでみんなで行って。でも家にはやっぱり無くて、「今は無い」「じゃあ明日持ってこいよな」なんて話をして。

相手が嘘をついたことをウソだって言うのは気持ちがいいことだから、やりだすと止まらなくなってしまうんですけど、私たちが生きている世界はいいウソ、悪いウソに囲まれています。だから「ウソだ!」って言う前に、「どうしてウソをついたのかな」ということを、一歩止まって考えてみる。
例えば「なんでこの子はモデルガンを持ってるってウソを言ったのかな」って考えてみたら、みんなにすごい!って注目されたかったんだろうなとか、勉強が苦手な子だったから、なにか他のことで注目して欲しかったんだろうなとか、ちょっとずつ友だちの気持ちがわかってくる。
それだけで、いじめも含めて世界のいろんなことが少し良くなると思うんです。

ウソは、自分を前に走らせて成長させる力もある

そもそも、自分が一番自分にだまされてるんじゃ無いかな。自分は絵が上手い、とか、走るのが速いとか、実はそれほどではなくても、そう思いたいし、すでにそう思っていることってあるじゃないですか。
今この瞬間、本当の自分よりもほんの少し良い自分でありたい。それって自分につくウソであって、そのウソを大切にして、どんどん叶えていけばいいと思うんですよね。そうすれば、少しずつ目指す自分に近づいていけるわけだから。ウソは目の前にぶら下がった人参みたいに、自分を前に走らせて成長させる力もあるんです。

取材・文/Questionary編集部

Q&A / 2023.11.01

プロフィール

浅生鴨

作家・広告プランナー

浅生鴨(アソウカモ)さん

作家、広告プランナー。1971年、神戸市生まれ。たいていのことは苦手。ゲーム、レコード、デザイン、広告、演劇、イベント、放送などさまざまな業界・職種を経た後、現在は執筆活動を中心に、広告やテレビ番組の企画・制作・演出などを手掛けている。主な著書に、『中の人などいない』『アグニオン』(新潮社)、『猫たちの色メガネ』(KADOKAWA)、『伴走者』(講談社)、『どこでもない場所』『すべては一度きり』『たった二分の楽園』(左右社)、『だから僕は、ググらない』(大和出版)、『ぼくらは嘘でつながっている。』(ダイヤモンド社)。自身が責任編集をつとめる『異人と同人』シリーズを展開中。座右の銘は「棚からぼた餅」。最新作は『三万年後に朝食を』(左右社)。

プロフィール

鈴木正

サーファー・シェイパー

鈴木正(スズキタダシ)さん

1942年生まれ。新潟県小千谷市出身。ゴッデスインターナショナル株式会社 代表取締役。日本のサーフィン文化の立役者。小さい頃からモノを創ることが好きで、ベニア板で自作のサーフボードを作り始め、好きが高じてサーフショップを開設。「よく人にだまされたけれど、”人を信じる”ところからすべてが始まる」というモットーの元、波瀾万丈な人生を送りつつ、シェーパー兼経営者として最盛期は年間5000本を生産し、サーフショップ『Goddess』は日本のサーフカルチャーの先駆けとして、半世紀以上の間国内外問わず多くの人から愛され続けている(荒井由実の『天気雨』の歌の中には、「サーフボード直しにGoddessまでいくと言った」というフレーズが登場する)。サーファーとしても、第3回全日本選手権大会シニアクラスで優勝、第40回、48回、50回のロイアルクラスでも優勝を飾るなど、数々の好成績を残す。サーフィン以外でも常に時代の波を捉え続け、ウィンドサーフィン、スノーボードのブーム時はいち早くビジネスにも名乗りをあげ成功を収めた。また、プレイヤーとしても、第一回全日本ファンボード選手権大会シニアクラス優勝、スノーボードでは、53歳でA級インストラクターの資格を取得。JABA公認スノーボードスクールを3ヵ所(山梨ミサカカムイ・長野湯の丸・新潟加山キャプテンコースト)開校。現在もシェイパーとして現場にたち続ける職人でありながら、海をこよなく愛するサーファーとして、日々海に入っている。著書に『人生はサーフィン、大きな波に乗れ!人生をエンジョイする16の秘訣』(セルバ出版)。

A

恥ずかしくなるじゃないですか

昔から“嘘も方便”という言葉がありますよね。
悪い嘘じゃないこともありますよね、人を褒めるときとか。
本当に悪い嘘をついたら、自分が恥ずかしくなるじゃないですか。
自分が許せなくなるというか、それは自分が一番よくわかりますよね。

取材・文/Questionary編集部

Q&A / 2023.11.01

プロフィール

鈴木正

サーファー・シェイパー

鈴木正(スズキタダシ)さん

1942年生まれ。新潟県小千谷市出身。ゴッデスインターナショナル株式会社 代表取締役。日本のサーフィン文化の立役者。小さい頃からモノを創ることが好きで、ベニア板で自作のサーフボードを作り始め、好きが高じてサーフショップを開設。「よく人にだまされたけれど、”人を信じる”ところからすべてが始まる」というモットーの元、波瀾万丈な人生を送りつつ、シェーパー兼経営者として最盛期は年間5000本を生産し、サーフショップ『Goddess』は日本のサーフカルチャーの先駆けとして、半世紀以上の間国内外問わず多くの人から愛され続けている(荒井由実の『天気雨』の歌の中には、「サーフボード直しにGoddessまでいくと言った」というフレーズが登場する)。サーファーとしても、第3回全日本選手権大会シニアクラスで優勝、第40回、48回、50回のロイアルクラスでも優勝を飾るなど、数々の好成績を残す。サーフィン以外でも常に時代の波を捉え続け、ウィンドサーフィン、スノーボードのブーム時はいち早くビジネスにも名乗りをあげ成功を収めた。また、プレイヤーとしても、第一回全日本ファンボード選手権大会シニアクラス優勝、スノーボードでは、53歳でA級インストラクターの資格を取得。JABA公認スノーボードスクールを3ヵ所(山梨ミサカカムイ・長野湯の丸・新潟加山キャプテンコースト)開校。現在もシェイパーとして現場にたち続ける職人でありながら、海をこよなく愛するサーファーとして、日々海に入っている。著書に『人生はサーフィン、大きな波に乗れ!人生をエンジョイする16の秘訣』(セルバ出版)。

プロフィール

小川和人

元郵便局員・『41歳の東大生』著者

小川和人(オガワカズト)さん

1956年、千葉県市川市生まれ。1980年、明治学院大学社会学部卒業。証券会社勤務、学習塾講師、教材制作会社勤務を経て、1988年、江戸川郵便局集配課(現日本郵便株式会社)に勤務。1997年、41歳で東京大学に入学し、2001年に卒業。郵便局で働きながら東京大学を受験、合格し、4年間通ったその経験をまとめた著書『41歳の東大生』(草思社)が話題に。2016年に日本郵便株式会社を定年退職。家族は妻と息子ふたり、孫ひとり。

A

一度ウソをつくとずっと つきつづけなくてはならない

ウソをついちゃいけないのは、一度ウソをつくと、そのウソをずっとつきつづけなくてはならないからだ。

だって、前に言ったことと、あとで言ったことが、つじつまが合わないようでは困るからね。
だから一度ウソをついてしまったら、本当はどこかで自分で勇気を出して止めないといけない。

でも、途中で「ウソをついてました」と言うのは恥ずかしいし、疲れる。反対に、ひとつのウソをつきつづけるためには、ウソを守るためにほかのウソをつかなければならなくなるので、もっと疲れるし、恥ずかしいことだ。
だから、ウソはつくべきではない。

それともうひとつ、ウソをついて、 「自分はウソつきだ」と思うことは、いやな気持ちになるものだ。自分で自分がいやになるのは、 自己嫌悪(じこけんお)といって、とてもつらいことだ。
だから、ウソはつくべきではない。

ところが、世のなかには、「いいウソ」というものがある。 だれも傷つけず、相手を勇気づけ、自分も他人もいやな気持ちにさせないようなウソだ。
そういうウソならどんどんついていいという人もいる。 でも、そういうウソだって、やっぱりウソであるいじょう、つきつづけなければならない。 そうでないと、ウソはかならずいつかバレて、だれかを傷つける。

ぼくはむかし、ライター(ものを書く人)になりたいという友だちがいて、書いたものを見せてもらったことがある。そのとき、本当はあまり上手だとは思わなかったのに、友だちをはげますため「とてもいい文章だよ」と言ってしまった。

それから何年か経って、友だちがコピーライターという自分の希望どおりの仕事について、本当にすばらしい文章を書きぼくの手のとどかないところにいってしまったと思ったとき、ぼくは思わず「前とちがって、今度は本当にいい文章だね」と言ってしまった。このときは、ぼくは本当のことを言ったのだ。 友だちは笑っていたが、ぼくのことをウソつきだと思ったにちがいない。 本当にほめたことまで、疑われてしまうのだ。

ぼくはそれいらい、そういうとき、だれかをはげますためであっても、なるべくウソはつかないことに決めている。 ただ笑っているだけだ。ただ笑っているだけだと、ちょっとバカみたいではある。だからやっぱり、ウソはつくべきではないのである。

取材・文/Questionary編集部

Q&A / 2023.11.01

プロフィール

小川和人

元郵便局員・『41歳の東大生』著者

小川和人(オガワカズト)さん

1956年、千葉県市川市生まれ。1980年、明治学院大学社会学部卒業。証券会社勤務、学習塾講師、教材制作会社勤務を経て、1988年、江戸川郵便局集配課(現日本郵便株式会社)に勤務。1997年、41歳で東京大学に入学し、2001年に卒業。郵便局で働きながら東京大学を受験、合格し、4年間通ったその経験をまとめた著書『41歳の東大生』(草思社)が話題に。2016年に日本郵便株式会社を定年退職。家族は妻と息子ふたり、孫ひとり。

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