私が精神科の医院でカウンセリングをしていたとき、自分に対してネガティブな評価をする人が多かったんです。それは、かわいいお姉ちゃんと比べられてきた、というような、姉妹・兄弟関係が関係していました。そこで私は、ありもしない理想を追い続けることはやめて、今あなたに与えられたものをどう使うか、ということを伝えていました。
例えばある日、中学生の髪の短い女の子が、顔の3分の1をかくすほどの黒ブチのメガネをしてカウンセリングにやってきたことがありました。
「お姉さんか妹さんいるでしょう?」と聞いたら、「双子の姉がいる」と。「髪の毛長いでしょう?」「先生、なんで姉を見たことないのにわかるのですか」
彼女にとってお姉さんは、ライバルなのです。だから、「お姉ちゃんといつも比べられて生きてきた」「お姉ちゃんと比べて性格が暗いと言われてきた」と言っていました。でもそういうふうに比べる必要はまったくないのです。私は彼女に言いました。「あなたは『暗い』と人から言われてきたかもしれないけれど、あなたは他の人に、自分の言っていることがどう受け止められるかということを常に意識できる人だ」と。「これまで人にわざと嫌がるようなことを言ったことないでしょう?」ってたずねたら、「はい」という答えが返ってきました。「あなたは暗いのではなく、優しいのだよ」と私は言いましたが、優しい自分なら好きになれますね。
お姉ちゃんと比べられてひどいことを言われたこともあったけど、少なくとも自分は、そういうことを誰かに言ったことがないと気づいたときに、自分が好きになる、自分に価値があると思えるようになる。そうすると、かわいいとか、容姿のことは大きな問題ではなくなってくるのです。