INTERVIEW

INTERVIEW

Q from all over the world

「世界中から産地直送Q!」

プロフィール

堀江知子

タンザニア在住ライター

堀江知子(ホリエトモコ)さん

東京外国語大学(スペイン語専攻)卒業。アメリカの大学院にてジャーナリズム専攻、卒業後に民放キー局のワシントン支局に就職。日本の視聴者にアメリカの政治や情勢をわかりやすく伝えるためのニュース企画・制作、アメリカ人政治家や著名人などへの取材を15年間担当してきた。2022年5月から、アメリカ人の夫、7歳の娘、4歳の息子と、タンザニアのダルエスサラームに移住。著書に『40代からの人生が楽しくなる タンザニアのすごい思考法』(ロズリン出版)。Xアカウント:ほりともタンザニア在住ライター @tmk_255

Vol.3

タンザニア・ダルエスサラーム

大事なことはオブラートに包む。
どこか日本と似ている感じ

「マサイ族の方々がケニアから出稼ぎに来ていて、街のあちこちにいます。彼らは”戦士”として幼い頃から訓練されているので、ここタンザニアでは警備員をしている人が多いんですが、以前彼らにインタビューをしたことがあって、『ナイフひとつあればライオンは殺せるよ。法律では禁止されてるけど』と言ってました。4歳の息子は『なんでマサイ族の人たちはみんなあの服を着ているの?』と、不思議みたいです」

2022年5月、アメリカ人のご主人の仕事の都合でタンザニアに家族(夫、7歳♀、4歳♂)で移住した堀江知子さん。それまでは、アメリカのワシントンD.C.で、日本のテレビ局員として15年間仕事中心の生活をしていたそう。

「アメリカは、自己主張していないと生きていけない世界でしたが、タンザニアは逆に“出る杭は打たれる”世界。コミュニティとしてがんばっていこう、という雰囲気なのでまわりより目立つことはどこかはばかられるし、大事なことはオブラートに包むので日本と似ている。私にとっては肩の力が抜けて暮らしやすいです」

7歳の娘さんと4歳の息子さんは、生まれも育ちもアメリカ。現在、娘さんはインターナショナルスクール、息子さんは幼稚園に通っている。「まだ期間も短いし、外国人として行っているのでローカルの子どもたちと同じ同じ目線では語れないですが」と前置きしつつ、「タンザニアの暮らしが子どもたちにもたらしてくれたものはとても大きい」そう。

「まず、子どもたちのことはコミュニティ全体で育てよう、といった雰囲気があるので、みんなが子どもたちに『マンボ(こんにちは)』とあいさつしてくれます。4歳の息子はコロナ禍で生まれて、アメリカでは幼稚園と家を行き来するだけの毎日だったこともありシャイな性格でした。でも今は、知らない人とも挨拶したり、警備のおじさんと楽しそうに話したりしています。また、いろいろな肌の人が一緒に生活しているので、人種の違いに抵抗がまったく無い。あとは、日々の暮らしの中で動物との距離が近いんですね。小学校に孔雀がいて、道を歩けば大きなリクガメや、牛、やぎ、馬がふつうに歩いていて、家の中ではヤモリに遭遇することもよくある。自然の中の一員として、一緒にその動物たちと暮らしているような感覚が芽生えてるんじゃないかと思います」

クリスマスが唯一、子どもたちが
新しい服をもらえる日

そんなタンザニアならではのいい面がたくさんある一方で、「今まで当たり前だと思っていたことが当たり前じゃない」と思うこともあるそう。

「タンザニアでは、クリスマスが唯一子どもたちが新しい服をもらえる日なんです。だから、基本的にモノは本当に使えなくなるまで捨てないし、大切にしています。『なんであの人はあんなボロボロの自転車を乗っているの?』と4歳の息子に聞かれたこともありますが、最近7歳の娘は『私たちは本当にラッキーなんだよ』というのが口ぐせになっています。娘は自分が大きくなってサイズ的に着れない服が出てきたら、『ママのタンザニア人の友だちの子どもにあげて』と言ってきます」

電気はしょっちゅう切れるし、水も不足する。「なんであの子たちは靴を履いてないんだろう」「なんであんなボロボロの家に住んでいるんだろう」子どもたちは否応なくそんなことを考える環境にいる。

ローカルの人々は、確かに貧しい人がまだまだ多い。だけど、最近感じるのは、彼らは貧しいけれどお金に対して執着心がないんです。基本的に貯金はしないし、その日自分と仲間たちが生きられたらそれでオッケーといった感じ。このあいだも友だちとランニングしていてふたりとも小銭を持ってなくて、通りにいたココナッツジュースを売っているおじさんが『次払ってくれればいいよ』と言ってジュースをくれました。たぶんそれは『みんなで助け合う』という考えがベースにあるからだと思います。誰か困っている人がいれば助けるし、いいことをすれば自分に必ず返ってくる、と」

そんなタンザニア人たちのキャラクターを表す、象徴的なタンザニア語があるそう。

“ポレ”って英語のスローという意味で、みんな口ぐせのように“ポレポレ”って言うんです。ローカルの人以外と話していても、『このあいだこんなことがあって、遅くてイライラした』と話すと、『ああ、タンザニアはポレポレだからね』なんて言われたりします

タンザニアには2024年の初夏頃まで滞在し、いったんアメリカに戻ったあと、その年の12月に香港に移住が決まっているという堀江さん一家。4歳の息子さんは「I”m Tanzanian!」と言っているそうだが、「私は日本人なので、日本のアイデンティティも子どもたちには大切にしてほしい」そう。

「タンザニアには日本人が190人しかいないのですが、日本語の補習校の授業が毎日受けられるんです。だから、娘は午前中はインターナショナルスクール、午後は補習校に通う毎日で、アメリカにいた頃より日本語が上手になっている印象があります。また、インターナショナルスクールでなにか発表するとき、日本の文化を学校のみんなに見せよう、と、補習校のみんなで準備してソーラン節を披露したこともありました。そういう活動ができているのもラッキーですね」

取材・文/Questionary編集部

INTERVIEW / 2023.11.16

  • 世界中から産地直送Q!

プロフィール

堀江知子

タンザニア在住ライター

堀江知子(ホリエトモコ)さん

東京外国語大学(スペイン語専攻)卒業。アメリカの大学院にてジャーナリズム専攻、卒業後に民放キー局のワシントン支局に就職。日本の視聴者にアメリカの政治や情勢をわかりやすく伝えるためのニュース企画・制作、アメリカ人政治家や著名人などへの取材を15年間担当してきた。2022年5月から、アメリカ人の夫、7歳の娘、4歳の息子と、タンザニアのダルエスサラームに移住。著書に『40代からの人生が楽しくなる タンザニアのすごい思考法』(ロズリン出版)。Xアカウント:ほりともタンザニア在住ライター @tmk_255

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