Q&A

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Q

なんでたくさんの言葉があるの?(小2・女子)

こたえたおとなたち
  • 日本語教育専門家・実践家

    嶋田和子さん

  • 日本人初・ルーマニア語の小説家

    済東鉄腸さん

  • 哲学研究者

    永井玲衣さん

プロフィール

嶋田和子

日本語教育専門家・実践家

嶋田和子(シマダカズコ)さん

昭和21年東京都生まれ。津田塾大学英文科卒業。外資系銀行に就職後、専業主婦を経て日本語教師となる。平成2年から国際青年交流学園イーストウエスト日本語学校に勤務。副校長まで務めた後退職。現在はアクラス日本語教育研究所代表理事、日本語教育学会監事、杉並区交流協会評議員および日本語教室統括コーディネーターなどに携わっている。著書『外国にルーツを持つ女性たち』(ココ出版)は、日本人と結婚した外国人女性たちの、文化の違いをパワフルに、前向きに乗り越えていくノンフィクション。『できる日本語』シリーズは、新しい日本語教育を目指して作成された教科書。

A

文化の数だけ言葉がある

たとえばおとなりの韓国の言葉は、日本語ととても似た言葉があるし、遠くはなれたところにはまったく違う言葉もあるし、おもしろいですよね。
ある日、私の日本語学校の学生が地元の小学校と交流したときのことです。日本語学校の学生はそのとき韓国人が多くて、地元の小学校の生徒が「韓国語教えて!」と韓国人の学生に聞いてきて、言葉を教え合っていたんですね。帰り際、,「アニョヒカセヨ 金貸セヨ アンニョンヒケセヨ 電気消セヨ 面白いね〜、僕韓国語勉強するよ!」と言って別れたんです(アンニョンヒカセヨは相手を見送るときの”さようなら”、アンニョンヒケセヨは相手から見送られるときの”さようなら”という意味)。その子どもたちの言葉の創造力におどろきました。
言葉って文化で、文化ってそこに住む人たちの考え方のこと。だから、その数だけ言葉があります。今は外国語と言ったら英語を学ぶけれど、ぜひ英語以外の言語にも挑戦してみてください。世界のいろいろな考え方を知ることができますよ。

取材・文/Questionary編集部

Q&A / 2023.10.17

プロフィール

嶋田和子

日本語教育専門家・実践家

嶋田和子(シマダカズコ)さん

昭和21年東京都生まれ。津田塾大学英文科卒業。外資系銀行に就職後、専業主婦を経て日本語教師となる。平成2年から国際青年交流学園イーストウエスト日本語学校に勤務。副校長まで務めた後退職。現在はアクラス日本語教育研究所代表理事、日本語教育学会監事、杉並区交流協会評議員および日本語教室統括コーディネーターなどに携わっている。著書『外国にルーツを持つ女性たち』(ココ出版)は、日本人と結婚した外国人女性たちの、文化の違いをパワフルに、前向きに乗り越えていくノンフィクション。『できる日本語』シリーズは、新しい日本語教育を目指して作成された教科書。

プロフィール

済東鉄腸

日本人初・ルーマニア語の小説家

済東鉄腸(サイトウテッチョウ)さん

1992年千葉県市川市生まれ。映画ライターとして活動後、引きこもり生活の中で東ヨーロッパの映画にのめりこみ、ルーマニアを中心とする東ヨーロッパ文化に熱中する。その後ルーマニア語で小説や詩を書き続け、現地でも作家として地位を確立している。著書『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、ルーマニア語の小説家になった話』(左右社)は、夢を叶えためのヒントと、学ぶことの楽しさがモーレツに伝わってくる、なにか新しいことを始めたくなるパワーをもらえる一冊。

A

その言葉を使うことへの誇りが感じられる

人が生きているうちにだんだんその人らしくなっていくように、共同体や集団なども、環境やいろいろな条件のちがいによって変わったり、進化したりするんじゃないか、って思うんです。
たとえば、ルーマニア語は、フランス語、ポルトガル語、スペイン語、イタリア語などと同じ”ロマンス語”に属するんですが、ルーマニアという国は場所としてはロマンス語に属するほかの国から飛び石のようにはなれています。むしろ、まわりは”スラブ語”に属する言葉を話す国に囲まれている。もともとロマンス語はラテン語から枝わかれして生まれた言語なのですが、ルーマニア語はロマンス語の中でいちばんラテン語に近いと言われています。そもそも“ルーマニア”って、ラテン語でローマ人という意味なんです。だから、国民として、古代ローマ人の言語であるラテン語(とそこから枝分かれしたロマンス語)に、誇りを持ち続けてきたんでしょうね。
 あとは「人とちょっと違うところが自分にあってほしい」という気持ちが、国にもあるんじゃないかと思うんです。生物でも、進化の過程で新しい特質を持つと、ほかの仲間たちが病気で死んでしまってもその特質を持っているものが生き残って発展していくことがありますよね。これは、国や言葉をふくめた文化においても言えることなんじゃないかな
それと、今ルクセンブルク語を一生懸命勉強しているんですが、ルクセンブルクでは法律の言語はフランス語で、新聞とか書物の言語はドイツ語で書かれていて、ルクセンブルク語は話し言葉として使われているけど書き言葉としてはまったく使われていないんですね。その背景には、やっぱりその言葉を使うことへの誇りが感じられるんです。つまりどこかで”自分”を意識するというか、「自分は他とはちがう」と思うと、さらに「自分はこっちの方向に進んでいけばいいんだ」とわかって、発展していくのが言語だったり、文化だったりするんだと思います。

取材・文/Questionary編集部

Q&A / 2023.10.17

プロフィール

済東鉄腸

日本人初・ルーマニア語の小説家

済東鉄腸(サイトウテッチョウ)さん

1992年千葉県市川市生まれ。映画ライターとして活動後、引きこもり生活の中で東ヨーロッパの映画にのめりこみ、ルーマニアを中心とする東ヨーロッパ文化に熱中する。その後ルーマニア語で小説や詩を書き続け、現地でも作家として地位を確立している。著書『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、ルーマニア語の小説家になった話』(左右社)は、夢を叶えためのヒントと、学ぶことの楽しさがモーレツに伝わってくる、なにか新しいことを始めたくなるパワーをもらえる一冊。

プロフィール

永井玲衣

哲学研究者

永井玲衣(ナガイレイ)さん

1991年東京都生まれ。学校、企業、寺社、美術館、自治体などで哲学対話を幅広く行なっている。著書に『水中の哲学者たち』(晶文社)。哲学とは、問うこと。あらゆる問いが、誰かがいることで練り上げられていく”哲学対話”の様子や、日常のささやかなエピソードが描かれた、“考える”ことの大切さと美しさを思い出させてくれる一冊。

A

自分が今話している言葉には思い入れがある

たしかになんでだろう? 
たくさんの言葉があるってことは、言葉がバラバラということで、それって困ることではある。
とある授業で、じゃあ「言葉ってひとつにした方がいい?」って子どもたちに聞いたら、みんな最初は無邪気に「うん!世界中の人が日本語をしゃべれればいいのに」と。
「でもそれって、今話している人の言葉を日本語にするってことだよ」と言うと、歴史の授業で勉強した、戦争で負けた国が勝った国に無理やり言葉を変えさせられたことを思い出して「え? それってよくないことかも」となる。「じゃあ、みんなが言葉を変えられるのはどう?」と聞くと「絶対イヤだ」。
自分が今話している母国語って変えられたくないし、思い入れがあるんですよね。

取材・文/Questionary編集部

Q&A / 2023.10.17

プロフィール

永井玲衣

哲学研究者

永井玲衣(ナガイレイ)さん

1991年東京都生まれ。学校、企業、寺社、美術館、自治体などで哲学対話を幅広く行なっている。著書に『水中の哲学者たち』(晶文社)。哲学とは、問うこと。あらゆる問いが、誰かがいることで練り上げられていく”哲学対話”の様子や、日常のささやかなエピソードが描かれた、“考える”ことの大切さと美しさを思い出させてくれる一冊。

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