私は全国のいろいろな学校に行って、“哲学対話”をしています。 以前、ある小学校の子どもたちと、この「なんで人前で泣くとはずかしいんだろう?」という問いについて話し合ったことがありました。 そして、生徒から出た答えのひとつは「”男は泣くな”と言われてきた」でした。 じゃあ、 「なんで泣いちゃいけないんだっけ?」 「スポーツ選手が流す涙にみんなが感動して、いい涙だったって言ったりするけど、涙にはいい涙、悪い涙とかあるのかな?」 そういうことが、私はどんどん気になってきます。
こうやって参加している人と一緒に考えて、”対話”することが、哲学対話です。 ある問いに対して答えが出なくても、「もっと知りたい」と思っているときに時間切れで終わってしまっても、それでいいと思っています。 その考えた”道のり”すべてが、ある意味答えだから。 たとえば、この問いのように“涙”についてみんなで考えて話をすると、話をする前と後ではあきらかに世界が変わって、涙のことが深くわかるようになります。私はそれを「世界と関係をむすびなおす」と言っているんですが、「こういうことを日常の中で続けていってね」と、いつも伝えています。