夜寝る前に、1日を思い返していた
宇宙に興味を持ったのは、小学校2年生のときに学校で「星を見る会」に参加し、天体望遠鏡に触れたときでした。当時はまだブラックホールがあるかどうかもはっきりしていなくて、「ブラックホールってなんだろう?」「宇宙の端っこ、隅っこはどうなってるのか?」「宇宙人ているのかな?」と思っていました。
私自身、その頃から特別な才能があったわけではないし、ふつうにのんびり育ったと思います。
ただ、小学校に上がるくらいから、誰に言われたわけではないのですが、なんとなく夜寝る前にその日に会った人や起きたことを思い返していました。「今日は親とケンカしちゃったけど、言い方が良くなかったかな」「あの時間は楽しかったなあ」「あのコと気まずくなっちゃったなあ」もう少し大きくなると、「平和な世の中になるといいなあ」とか。
小学校に上がってからは、委員会や部活で、「どうしたらみんなともっとうまくできるかな」といつも考えていました。
大切なのは、毎日の生活の中にあるひとつひとつの経験から何かを“学ぶ”、ということだと思います。「あのとき自分はこうすればよかったかな、次はこうやってみようかな」と目的意識を持つことで、毎日が学びに変わっていきます。その連続が今につながっていると思うんです。
宇宙飛行士を実際やってみて思うのは、“誰でも目指せる仕事”だということ。
たとえばアスリートや音楽家は、早くから始めないとその芸や才能が身につかないし伸びない、ということはあると思います。でも宇宙飛行士に関しては、そうした才能はなくても大丈夫。いつからでも興味を持ったときから目指せます。
宇宙飛行士の世界は競争社会です。訓練は評価されるし、学校みたいに通知表みたいなものもある。泥まみれになったり、メンバー同士口論をしたりもする。でも、不思議と他の人のこともみんなで全力でサポートするんです。なぜなら、自分が宇宙に行くとき、仲間のサポートがないと何もできないから。まさに“恩は人のためならず’で、相手のためにしたことが、自分に返ってくることを身をもって感じていました。
振り返ると、宇宙は一番長く興味を持ち続けた分野です。60年以上前、人類初の宇宙飛行を成功させたユーリイ・ガガーリンさんの頃は、宇宙飛行士の資格は眼が良くないとだめ、虫歯が一本でもあるとだめ、アメリカか旧ソ連の元軍人でないとだめ、などとても厳しいものでした。でも今は、眼が悪かったらコンタクトレンズを使えますし、虫歯も治療してあれば大丈夫、さらにはいろいろな国から宇宙飛行士が生まれています。
こんなふうに日々さまざまなことが変わり続けていくし、これだけ科学が進歩しても、宇宙にはまだまだわからないことが多い。そこが面白いんです。
でも、宇宙だけに興味があったわけではありません。昔から動物も好きだし、中学生時代はいろいろな国に行ってみたくて、宇宙よりも海外に興味があった時期もありました。
ひとつのことをすごく好きになる子もいるけど、私のようにさまざまなことに興味を持つ子のほうが多いんじゃないでしょうか。いろいろな引き出しを持って、その中で好きなことがあったら深めていくと、夢につながると思います。