
「子どもたちも、おじいちゃん、おばあちゃんたちも、必ずここから中に入るんですよ」 入口からまっすぐにのびる廊下を指さしながら、そう話してくれたのは押切道子さん(「NPO法人地域で育つ元気な子」理事長)。
門前仲町駅から徒歩5分。富岡八幡宮と深川不動堂に両側から見守られているかのように佇む『深川えんみち』を訪れたのは、午後2時。
「おかえり!」と、続々と入ってくる子どもたちに声をかける押切さん。その声が館内に心地よく響きます。

高齢者の方々が夢中になっているカルタに興味津々の子どもたち。
1階の廊下を進んだ先に並ぶテーブル席では、高齢者の方々がカルタに夢中になっていました。そこへ、ランドセルを背負ったままの小学生たちが足を止め、自然と輪に加わっていきます。
「ここでは、おばあちゃんと友達になって自然と交換日記を始めたり、おばあちゃんの夢を聞いて、それを絵本にした子どももいます。高齢者の方々も、子どもたちとふれあうことで元気になるみたいです。たまにけんかもしますよ(笑)」
また、認知症の方もいらっしゃるため、子どもたちに向けて認知症について学べる劇を職員の方々が行うこともあるそうです。
「その際は、近隣のケアワーカーの方に監修に入っていただいています。あと、このあいだまで毎日来ていたおばあちゃんが、突然来なくなることもある。つまり、“死”がすぐそばにあるんですね。それもまた、子どもたちにとって大切な学びになると思っています」
他愛もないことを話す時間を重ねていきたい
「えんみち」という名前のとおり、人と人との「縁」を何より大切にしていて、「今この瞬間でも、地域の人が自由に出入りしていいんですよ」とのこと。
そんな地域のつながりを大切にしながら、「年に2回、大きなイベントも開催しています」と話してくれたのは、施設長の荻野貴大さん。
「ここが地元で、子どもの頃にこのあたりで遊んでいたというご高齢の方もいらっしゃいますし、そのお孫さんがここの学童に通っているケースもあります。この地域はもともと人とのつながりが深く、信頼関係がある。だからこそ、こうして多世代が境目なく共生できているのかもしれませんね」

スペース貸しの私設図書館(2万円/1スペース)。「深川えんまち」の支持者の方々が借りていて、本をきっかけに新たなつながりも生まれているそう。
それにしても、ここまで子どもたちと高齢者がひとつ屋根の下で混ざり合いながら、安心して過ごせる「カオス」は、なかなか見たことがありません。 おふたりは、この境界のない居場所を運営するうえで、どんなことを心がけているのでしょうか。
「おじいちゃん、おばあちゃんに、たまに怒られることもあります。その様子を見て、子どもたちは『ああ、先生も怒られるんだ』と思うんですよね。私は、先生や職員としてではなく、ひとりの人間として関わりたいと思っています」(荻野さん)
「まずは、怪我をさせないことが大前提です。そのうえで、形式ばった関わりよりも、日々のあいさつや、他愛もない会話を重ねていきたい。そうした普通の会話ができる関係になれたらいいなと思っています」(押切さん)

2Fの学童保育クラブからは常ににぎやかな声が響き渡っていました。

左:「NPO法人地域で育つ元気な子」理事長の押切道子さん。右:施設長でイベント事業責任者の荻野貴大さん。
深川えんみち
1Fが高齢者デイサービス、2Fが学童保育クラブ、子育てひろばの3つの事業からなる、複合型の福祉施設。
東京都江東区富岡1−15−9

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