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「親の所得格差」が強く関係!? 「子どもの体験格差」の解消に取り組む体験奨学金事業「ハロカル」って?

 

2022年12月に発表された、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの全国の小学生保護者2097人へのアンケートによると、

 

・年収300万円未満の家庭では、約3人に1人の子どもに、スポーツや音楽、キャンプ、旅行といった学校外の体験機会が、1年間を通じてまったくなかった

 

・「親の所得格差」が「子どもの体験格差」と強く関係している

 

・子どもの学校外の体験活動にかける1年間の支出には、家庭の状況により2.7倍の格差が生じている

 

という結果が明らかになりました。

そこでスタートした、子どもの体験奨学金事業『ハロカル』。

 

「子どもの体験格差」という課題に取り組むこの事業は、いったいどういう仕組みなのでしょうか? チャンス・フォー・チルドレン(以下CFC)の内藤日香里さんにその内容を聞きました。

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Questionary まず、『ハロカル』の事業内容について教えてください。

 

内藤日香里さん(以下、内藤) 内容としては、おもに低所得家庭の小学生の子どもに対して、スポーツや音楽、絵画教室など、文化的な活動に参加できるような奨学金(=クーポン)を提供する事業です。

 

現在ハロカルは、「ハロカル東東京」「ハロカル石巻」「ハロカル岡山」「ハロカル沖縄」があり、ハロカル東東京はCFCが主体となって墨田区や江東区など7つの区で展開、他の3つの地域はその地域のNPOの方々などに運営をご協力いただいています。

 

Questionary その奨学金はどこで利用可能なのでしょうか?

 

内藤 奨学金が利用できるところは、ピアノや絵画、スポーツ教室など、その地域に根ざした場所です。その際、地域ごとで活動する「地域コーディネーター」が、子ども&そのご家庭とローカルの方々との出会いを、子どもたち一人ひとりの興味・関心に応じてサポートしています。

 

そもそもハロカルという名称には、「子どもたちに文化(カルチャー)や体験と出会ってほしい」「その体験を通じて、それぞれの地域(ローカル)で想いを持って活動している大人たちと子どもたちが出会うきっかけになってほしい」という意味をこめているんです。

 

だから、ただ奨学金を子どもにお渡しするだけではなく、その地域コーディネーターが例えば保護者の方と面談したり、一緒に遊んだりすることで、「このお子さんは何に関心を持っているのかな」「こんな先生方となら合うじゃないかな」といったことをリサーチしています。

 

例えばあるお子さんで、奨学金を提供された後、なかなか利用に結びつかないケースがありました。地域コーディネーターが伴走を続ける中で、その子とすごく合うんじゃないかというピアノの先生と出会い、そこでピアノをやってみたらどうかと提案させていただいたんです。

 

そのお子さん自身はピアノの経験はまったくなかったんですが、その教室に通い始めたところ、その先生とすごくマッチしたんです。保護者の方からも「学校から帰ると宿題よりも先にピアノの練習をしています」「自分の好きなミュージシャンの曲をがんばって練習してます」と伺いました。

 

©Tatsuya Suzuki

 

もともとひっこみ思案で、大人とコミュニケーションをとるのが苦手だったけど、その先生と出会ったことで大人に対する安心感みたいなものが芽生えて、「近所の大人の方にきちんと挨拶できるようになりました」と。そんなエピソードもありました。

 

Questionary 2023年7月から本格的にスタートした「ハロカル」ですが、今のところ反響はいかがですか?

 

内藤 「年収300万円未満の家庭では、約3人に1人の子どもに学校外の体験機会が1年間を通じて全くなかった」「「親の所得格差」が「子どもの体験格差」と強く関係している」「子どもの学校外の体験活動にかける1年間の支出には、家庭の状況により2.7倍の格差が生じている」といったアンケート結果は多くのメディアでも取り上げられて、SNS上などでも反響が大きかったです。

 

「体験格差」という課題は可視化されたことによって、徐々にですが世の中に広がったのではないかと思います。利用者の募集に関しては、まだ定員を超えた申し込みがある状況ではないので、事業自体の知名度はこれから上げていく必要があると考えています。

 

Questionary 今後はどんな目標を掲げられているのでしょうか?

 

内藤 そうですね。先ほど申し上げた4つの地域だけでは、子どもたちの体験格差を解消する上でサポートできる数が限られるので、地域を広げていきたいです。

 

一方で、やみくもに地域を増やしていくのではなく、本当に子どもたちのやりたいことが実現できる、その体験を通じて地域の大人の方々とつながっていける事業であるために、ご一緒できそうな団体を探し、綿密にやり取りをしながら「そもそもこの地域でニーズがあるのか」「地域コーディネーターとして一緒に協働していただけそうか」のリサーチに時間をかけて、ていねいに進めていきたいと思っています。

COLUMN / 2024.04.30