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毎日給食の時間に放送室で絵本を読み、インスタライブ!

 

全国の小学校に点在するユニークな校長たちのインタビューシリーズ『校長採集』。第一回目は神奈川県秦野市立北小学校の高橋明久校長が登場!給食の時間に校長みずから放送室で絵本を読み、その様子を個人アカウントのインスタライブでも毎日配信中。そこに込められた思いとは?

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「ここ、、、校長室ですよね?」

前後の部屋のドアは終始開きっぱなし。

お昼休みになった途端、「お邪魔しまーす」とたくさんの児童たちが校長室を訪れる。

先日ケガをして、無事治った児童が顔を見せに来たり、

女子のミニバスケ部の面々が、県大会の決勝進出を報告しに来たり、

それを聞いて「すご!」「すごいねえ」「いやすごいなあ」と校長が涙している横で、

「何をやっているの?」「しゅざい?」

「日本で左利きと右利きは何%ずついるでしょう?」

「校長ドラえもん先生、掃除道具どこ?」

と、かまわず質問し続ける児童たちと、まるで聖徳太子のように児童たちからのすべてのボールをやさしく聞き入れ、打ち返し続ける高橋校長。

ところが、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った途端、児童たちは見事なまでにあっさりと引き上げていった。

そして、まるで何事もなかったかのように静寂が訪れる校長室ーー。

 

Questionary どうして『お話のプレゼント』を始めようと思ったんですか?

 

高橋校長(以下、高橋) 前々から、校長になったら児童が集まる校長室にしたい、あとは放送室を使って、オールナイトニッポンみたいにラジオDJのようなことをやりたいという構想はあったんです。

 

去年の4月に校長になったのですが、そもそもは、コロナ禍で昼食の時間が「黙食」で、みんな前を向いて、静かに黙って食べていたんですね。可哀想というよりは、これはなんとかならないかな、と思って。

 

当時黙食はしなければいけない世の中だったので、黙食を邪魔せず、先生たちもゆっくり給食を食べてられて、でも子どもたちには楽しみを与えたい、という思いから、放送委員に迷惑にならない、そしてどの学年も食べている時間帯を探りつつ、毎日12時45分から12時55分の10分間に絵本を読み聞かせる「お話のプレゼント」が誕生しました。

 

絵は見せていないから、「読み聞かせ」とは違ってただ聞かせているだけなんだけど、それがのちのち、児童たちの想像力や思考力につながっていくといいなあと思っています。

 

Questionary インスタライヴで配信しているのはなぜですか?

 

高橋 本来は学校に来て、みんなと給食を食べながら「お話のプレゼント」を聞いてもらえればいいんだけど、登校が難しい子が一定数いたので、最初はその子たちのためだけにやっていたんです。

 

その後、全家庭に配信の意図とアカウントを伝えたら、夕ご飯の時に家族でアーカイブを視聴して、読書談義をしているといった声も届くようになりました。

 

Questionary 毎日となると、絵本のネタに困りませんか?

 

高橋 私は子どもが4人いて、自宅に絵本の配本サービスをお願いしていました。校長室にあ400冊くらいある絵本は、ほとんど私物です。

 

どの絵本もどんな内容かは大体覚えているので、10分で読めそうなものを選んでいるのですが、この「お話のプレゼント」を何回か繰り返しているうちにある変化が起きてきて。学校図書館で読んで「いいな!」と思った本とか、自分の家の大切な絵本を、児童たちが「これ読んでほしい!」と直接持ってくるようになったんです。

 

だから、ネタは尽きません。ある時から、読む前に「この絵本は、○年○組の〇〇さんからのリクエストで」と言うようにしたら、さらに人気が爆上がりしました(笑)。

 

Questionary 児童からのリアクションは?

 

高橋「今日のお話は楽しかった」とか、「よくわからなかった」とか、たくさん届きます。

「お話のプレゼント」は音声だけなので、実はわかりやすくするためにいろいろと文を添えているんですよ。

 

今年から「黙食タイム」は「もぐもぐタイム」に変わって、話をしながら食べても良くなりました。

黙食タイムの時は、笑っちゃう絵本は自粛していたんですが、今はそういう絵本も読むようにしています。

 

児童が本を持ってきて、それを読んでもらえて、読んでもらえたからまた本が欲しくなって、という感じで、ご家庭でもやりとりも生まれているようで、おうちの人たちからもメッセージをいただきます。

 

Questionary しかし、1年で生徒さんたちとここまでの関係性を築けるものなんですね。

 

高橋 そうですね。楽しく、ストレスなく、を心がけてます。

 

校長室に集まる子たちは、なにか聞いて欲しいことがある子もいるし、教室に居場所がない可能性の子もいます。実際自分の教室に入れない子たちが、この校長室で次なる一歩を踏み出すべく練習をしている、というケースもあります。

 

Questionary では、校長として今大切にされていることは何ですか?

 

高橋 昔は学びの場は学校しかなかったけれど、今は選択肢が増えて、学校に行かなければいけないとか、教室にいなきゃいけないとか、っていう時代では無くなっています。だから、子どもたちにも先生たちにも選択肢があるべきだと思っています。

 

うちの学校は、1日の平均欠席児童が約700人中5%が病気や家事都合、1%が登校が難しいという状況です(2024年1月現在)。

 

僕のインスタライブが学校との接点という児童もいれば、そうでない児童もいます。僕はこれ見てくれたら出席でいいと思っているのですが、やりすぎちゃうと今度はみんな学校に来なくなってしまうかもしれないので、その塩梅が難しいですね。

 

Questionary 今後のビジョンは?

 

高橋 私が学級担任していた時代に担当していた主な教科は、生活総合でした。

 

生活総合という教科は教師がある程度好きなことをやれるので、(横浜国立大学教育学部附属)横浜小学校にいた時は、45人乗りの筏を2年かけて作って、横浜「海の公園」からみんなでそれに乗って出航したり、折り紙飛行機耐空時間世界チャンピオンに挑戦状を叩きつけて戦ったりしました。世界チャンピオンには負けましたが、その後彼らは、小学生全日本チャンピオンになりました。

 

誰もやっていないことに挑戦する、というのが私の生活総合の授業テーマでしたので、今は管理職で学級経営はできないけど、それと同じ気持ちで学校経営はできるな、と思っています。

 

もっとぶっ飛んでいる先生は世の中にいっぱいいると思いますが、私の場合は規定の範囲の中で限界値を常に探り続けていきたいと考えています。

 

あとは、先生たちの働き方改革も求められていますので、「心理的安全性」を子どもたちと先生たちとの関係の中で担保できると、さまざまなことが向上できるのではないかと仮説を立ててやっているんですよ。

 

Questionary なるほど。教員の方々とはどのようにして良好な関係を築くのでしょうか?

 

高橋 これはもう、日々の感謝の気持ちを口にする、ですね。

 

Questionary まるで夫婦関係みたいですね。

 

高橋 夫婦よりも感謝の気持ちを伝えていますよ、お菓子や飴ちゃんもいっぱい差し上げています(笑)。

 

プロフィール

高橋明久 校長先生

Akihisa Takahashi

20代、30代は小学校の教員、40代は県や市の教育委員会などの行政機関、50代は教頭先生を経て、2023年4月に秦野北小学校(生徒数693名)の校長に就任。毎日昼休みの12時45分から12時55分までの10分間、放送室から絵本を朗読しインスタライブで配信する「お話のプレゼント」が話題に。

COLUMN / 2023.12.07