Q&A

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なぜいやなことがあったとき、家族に当たってしまうんだろうと思います((小3・女子))

こたえたおとなたち
  • 元郵便局員・『41歳の東大生』著者

    小川和人さん

  • 障害福祉施設『スウィング』代表

    木ノ戸昌幸さん

プロフィール

小川和人

元郵便局員・『41歳の東大生』著者

小川和人(オガワカズト)さん

1956年、千葉県市川市生まれ。1980年、明治学院大学社会学部卒業。証券会社勤務、学習塾講師、教材制作会社勤務を経て、1988年、江戸川郵便局集配課(現日本郵便株式会社)に勤務。1997年、41歳で東京大学に入学し、2001年に卒業。郵便局で働きながら東京大学を受験、合格し、4年間通ったその経験をまとめた著書『41歳の東大生』(草思社)が話題に。2016年に日本郵便株式会社を定年退職。家族は妻と息子ふたり、孫ひとり。

A

かぞくは自分の一部だと思っているから

いやなことがあったとき、かぞくにあたってしまうのは、かぞくが本当は大好きだからだ。 かぞくは自分とはぜんぜん違う別の人間だと思えていなかったり、かぞくは自分の一部だと思っていたりすると、自分に対するのと同じようにふるまってしまう。
自分に対するように、なんの遠慮もなく、怒ったり泣いたりしてしまう、ということだ。

 

でも、自分のことが本当に大きらいな人がいないように、かんしゃくを起こしたり騒いだりしても、 かぞくが大好きな人は、すぐに仲直りしてしまう。 だって、自分が好きなように、かぞくが大好きなんだから。
それはすごくふつうのことで、悪いことではないと、ぼくは思う。

 

では、かぞくにあたらないようになるためには、どうしたらいいんだろう。 それには、たくさん本を読んだり、学校の勉強をしたり、もちろん友だちと遊んだり家でかぞくと食事をしたりゲームをしたりして、うれしい気持ちや悲しい気持ちをできるだけたくさん味わうべきだと、ぼくは思う。そうすると人の気持ちに共感したり人がなにを考えているか少しずつわかってきたりするからだ。

 

人の気持ちを考える力を、想像力(そうぞうりょく)という。想像力を身につけると、かぞくにも優しくなれると、ぼくは思う。かぞくの気持ちを、自分の気持ちとはぜんぜん別のものとして考えることができるようになるからだ。かぞくは自分とはぜんぜん違う人間だと考えることがあたり前になる。 

 

もしかしたら、ある日とつぜん、かぞくはいなくなってしまうかもしれない。自分は元気なのにかぞくが病気になったり、どこか遠くに行ってしまうかもしれない。もう二度と会えなくなるかもしれない。
そうしたらどんなに悲しいだろう。 想像力を身につけると、そんなことも考えられるようになる。
そうしたら、なにかいやなことがあったとしても、かぞくにあたってしまうことはなくなるかもしれない。ぼくはそう思う。

 

とくに、いい本を読むのは、たとえて言えば、自分のなかの「自分でない人」と対話(たいわ)することだと、ぼくは思っている。
だから、本を読み、勉強しよう。かぞくにも自分にもあたらないですむように、しっかり勉強しよう。
でも、ときどきケンカをするのは、とってもよいことだ。

取材・文/Questionary編集部

Q&A / 2023.11.17

プロフィール

小川和人

元郵便局員・『41歳の東大生』著者

小川和人(オガワカズト)さん

1956年、千葉県市川市生まれ。1980年、明治学院大学社会学部卒業。証券会社勤務、学習塾講師、教材制作会社勤務を経て、1988年、江戸川郵便局集配課(現日本郵便株式会社)に勤務。1997年、41歳で東京大学に入学し、2001年に卒業。郵便局で働きながら東京大学を受験、合格し、4年間通ったその経験をまとめた著書『41歳の東大生』(草思社)が話題に。2016年に日本郵便株式会社を定年退職。家族は妻と息子ふたり、孫ひとり。

プロフィール

木ノ戸昌幸

障害福祉施設『スウィング』代表

木ノ戸昌幸(キノトマサユキ)さん

1977年、愛媛県生まれ。立命館大学文学部卒。引きこもり支援NPO、演劇、遺跡発掘、福祉施設等の活動・職を経て、2006年、京都・上賀茂に障害福祉施設『スウィング』を設立。絵や詩やコラージュなどの芸術創作活動『オレたちひょうげん族』、全身ブルーの戦隊ヒーローに扮して行う清掃活動『ゴミコロリ』、ヘンタイ的な記憶力を駆使した京都人力交通案内『アナタの行き先、教えます』などの創造的実践を展開中。著書に『まともがゆれる 常識をやめる「スウィング」の実験』(朝日出版社)。

A

自分が経験したイヤな思い、怒りを表していい場

Qさんという人が『スウィング』にいるんですけども、どんな人かというと、
例えばみんなで行く旅行が楽しすぎて、旅行が終わってしまったら半年くらい『スウィング』に来られなくなったり、
足の裏が汚れているだけなのに「足が腐っているかもしれないから休む」と言ってきたり、
「好きな色は?」「好きな武器は?」「好きな動物の尻尾は?」など質問を投げかけながら、その答えを組み合わせてモデルの顔を合体メカに仕立て上げるというユニークな似顔絵を描いたり(老若男女問わず大人気)……。

そんな彼は、よく人に当たるんです。でもそれは、『スウィング』という場所に安心してるんだと思います。
嫌なことがあっても、外で爆発してしまうと大変なので、「それをなんとか我慢して、『スウィング』まで持ち込んでくれ」とよく言うんですけど。

『スウィング』は自分が経験したイヤな思い、怒りを表していい場なので。
きっと家族もそうなんじゃないでしょうか。

取材・文/Questionary編集部

Q&A / 2023.11.17

プロフィール

木ノ戸昌幸

障害福祉施設『スウィング』代表

木ノ戸昌幸(キノトマサユキ)さん

1977年、愛媛県生まれ。立命館大学文学部卒。引きこもり支援NPO、演劇、遺跡発掘、福祉施設等の活動・職を経て、2006年、京都・上賀茂に障害福祉施設『スウィング』を設立。絵や詩やコラージュなどの芸術創作活動『オレたちひょうげん族』、全身ブルーの戦隊ヒーローに扮して行う清掃活動『ゴミコロリ』、ヘンタイ的な記憶力を駆使した京都人力交通案内『アナタの行き先、教えます』などの創造的実践を展開中。著書に『まともがゆれる 常識をやめる「スウィング」の実験』(朝日出版社)。

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